第9章 事情聴取(相澤消太)
エリちゃんの部屋に着いて、ドアを開けた消太が怪訝な顔をした。
「……居ないな」
「心当たり、ないの?」
消太は少し考えた後、「耳郎」と呟いた。
「耳郎?」
「ああ、A組の奴なんだが音楽だったり色々、教わってるらしい」
ちょっと行ってみるか、と消太が歩き出したのでその後を着いていく事にしながら、考える。
A組……
こないだ、逃げるように去ったからなぁ……
何か色々、聞かれそうでどうしよう……
いや、それは流石に自意識過剰か……
「うぶっ!」
消太が突然立ち止まったので、背中に思い切りぶつかってしまった。
いつの間にか目的地に着いたらしい。
「着いたぞ。何ぼっとして歩いてんだ」
「……ごめん」
鼻をさすりながら言うと、変な奴と言わんばかりの表情でこちらを見てくる。
そして、衝撃の一言をぶっ放した。
「すまん、繭莉。これから職員会議だから、1人で行ってくれないか」
「……ほぇ……」
な、何だって……?
そんな、大海原に放り投げるような事……
私、1人?
心細すぎる……!
だけど、ここで「行かないでぇ!」と我儘を言う訳にもいかない。
「……分かった、何とかする……」
「頼んだ。終わったらなるべく早く、来るから」
そう言うと、消太はすたすたと去って行ってしまった。
ホント、何回も言っちゃうけど心細いよぉ……
でも、よく考えたら知らない人しか居ない訳でも……いや、ほとんど話してないし、知らない人同然か……
やっぱ、心細い……っ……
「こんにちはぁ……」
恐る恐る寮の扉を開けると、そこには嬉しい偶然、緑谷くんが居た。
「あ!えと、お久しぶりです、甘井さん……ですよね?エリちゃんの髪、切りに来てくれたんですか?」
あ、よかった。話しやすい子が居てくれて。
「緑谷くん、お久しぶりです!そうなの、消太に頼まれて……エリちゃん、いるかな?」
「あ、居ますよ!エリちゃーん、甘井さん、来たよ!」
緑谷くんがこいこいと手招きすると、ソファの陰からエリちゃんがひょっこり顔を出した。
「甘井、さん」
エリちゃんはとてとてとこちらに来ると、ひしっと私に抱きついてくれた。
んもう、相変わらず可愛いぃ!
おねーさん、今回も張り切っちゃう!