shooting star【怪獣/保科宗四郎/甘々】
第1章 運命が変わった日
女の子は私の姿を見て、一気に顔をくしゃりと歪ませた。
泣きそうな女の子。
でも、泣いている暇は無い。
「っ、···げて·····、逃げて···早く···、っ、とおく、まで···」
息をするだけで肺が痛い。
多分肋の骨が刺さってるかもしれない。
激痛に顔が引きつって上手く笑えているのか分からない。
「ひっく、お、ねーちゃん···は?」
「後で、いくから······ね?」
体が動かせない。
私はもうすぐ、多分死ぬ。
あぁ───、そっか、私がまだ小さかった頃に怪獣から身を呈して守ってくれた父と母も、こんな気持ちだったんだろうか···。
「逃げなさい!早くっ···出来るだけ遠くへ!」
残り少ない体力を絞り、声を出した。
女の子は泣きながら体をビクつかせて、意を決した用に私に背を向けて一目散に駆け出した。
そう、それでいい···。
遠くなる女の子の姿をぼうっと眺めて、意識が遠のく瞬間だった。
「来るのが遅くなってすまんなぁ···辛いだろうけど気張りや。もう少しの辛抱やで」
「···、?」
私の横になる視界には、怪獣を討伐に来たのだろう人の声。
柔らかくて、耳に心地よいそんな声。
私を励ましてくれているのだろう、けれどごめんなさい。
私は、もう逝きます。