第1章 出会い
「じゃあそろそろご飯にしましょうか」私たちは食卓につくと夕食を食べる準備をしたのだった。私は彼のことで浮かれていたけど、「帰ってきたぞー」と玄関からお父さんの声がした途端その気分は一気に下がってしまった。「……ただいま」お父さんが不機嫌そうにリビングに入ってくると、お母さんも心なしか不機嫌になったように見える「おかえりなさい。ご飯出来てますよ」「あぁ、ありがとう」お父さんはぶっきらぼうに答える。「今日は夢子に友達ができたらしいです」お母さんがそう言うとお父さんは少し驚いた様子でこちらを見る。「ふーん……そうなのか?」「はい、この子にもようやくお友達ができたんです!」お母さんは嬉しそうに言う。しかしお父さんの表情はあまり変わらなかった。「ふーん……まあいいんじゃないか?そいつのこともいつか教えてくれるんだろうなぁ?」お父さんは鋭い目つきでこちらを睨む。その目はまるで獲物を狙う獣のようだった。私は思わず冷や汗をかく。「……うん、もちろんだよ」私はなんとか笑顔を作って答えることができたのだが内心はかなり動揺していた。(どうしよう……またお母さんを傷つけてしまうかもしれない……)私がそんなことを考えている間にもお父さんは不機嫌そうに料理を食べ始める。「美味しいよ」「……そうですか、ありがとうございます」お母さんは少し安心したように答えたがやはりどこか元気がなかった。(うぅ……なんとかしないと)私はそう思いながらもどうすることもできずにいるのだった。やっと二階の自室に帰るとお母さんは…はぁ~と大きなため息をつく。「大丈夫?お母さん……」私はお母さんを心配して声をかける。「うん……ごめんね。心配かけちゃって」「大丈夫だよ!」私は胸を張って言う。「……ありがとうね、夢子」お母さんは優しく微笑むと私の頭を撫でてくれた。(ごめん、お母さん……私のせいで)私は心の中で謝ることしかできなかった。