第2章 悪夢
「え?」彼女は驚きの表情を浮かべている。「いつも夢子やお前の母ちゃんがボロボロにされてて……最初は掴み合いとかしているだけだったんだ。でも……段々とエスカレートしていって最終的に殺し合いに発展するんだ」俺は思いだすだけでも吐き気がしてくるほどだった。「そ、それでどうなったの?」彼女は恐る恐る聞いてくる。「……俺が殺す直前にいつも目が覚めるんだ。まるで俺の殺意を煽っているような感じだ……」俺はため息をつくと俯く。「それでさ、俺……気づいたんだ。心の底では夢子の父親を殺したいって思ってるんじゃないかって……だから、最近あの夢を見始めたんじゃないかって……」俺は泣きそうになりながら言う。「ごめんなさい。辛いこと思い出させちゃって……」夢子は慌てて謝ると抱きしめてきた。俺はしばらくそのままでいた。「違う!違うんだ!これは…お前のせいじゃない!父親のせいと俺の弱さのせいだから……」「……でも、三ツ谷君は優しいよ……だって私のお父さんに何度も謝ってくれたし……それに私を助けてくれた」彼女は微笑みながら言う。「え?」俺は驚いてしまう。「私が殴られてボロボロになってた時も庇ってくれてありがとう……本当に嬉しかったんだ」彼女は涙を流しながら言う。「っ!」俺は思わず彼女を抱きしめる力を強めてしまう。「ちょ、ちょっと三ツ谷君!?」彼女は驚いているようだった。「ごめんな……本当はお前を守りたいのに……」俺は自分の無力さを痛感していた。「でも、私は幸せだよ?」彼女は微笑みながら言う。「え?」俺は思わず聞き返す。「……だって、あなたにこんなにも大切に想われてるんだもん」彼女は照れながら話す。「っ!」俺は思わずドキッとしてしまう。「だから……もっと私を頼ってよ!私もあなたの力になりたいから!」彼女は力強く言う。「ありがとう……」俺は再び彼女を強く抱きしめたのだった…あれからあの夢は見なくなったけど、彼女から「苦しい」とか「ごめんね。私のせいだよね」とかそういう言葉を聞いたときの殺意は収まらなくなってきた。でも、その度に俺は彼女を守りたいという想いを強く感じるようになるのだった……