第1章 出会い
「はぅ……お母さん大丈夫?」「えぇ……なんとかね。夢子、いつもごめんね。私のせいで……」母親は泣きながら夢子に謝る。「お母さんのせいじゃないよ!悪いのはお父さんだから」「でも……私がもっとしっかりしていれば……」母親は自分のせいだと思い込んでいるようだった。「ねぇ、夢子はお父さんとお別れしたい?」「え?どうしてそんなこと聞くの?それって」「えぇ、離婚……もしあなたがもうお父さんとお別れしたいなら離婚してもいいわよ」「で、でも……」「大丈夫よ!私がなんとかするから!」母親は笑顔で言う。しかし、その目はどこか悲しげで辛そうだった。「お母さん……」夢子は母親の目を見て少し考える。(私はお父さんと別れたくない)夢子はそう思ったが、同時に自分のせいで母親を悲しませたくないという気持ちもあった。「私は…まだ平気だよ。お母さん」「本当に?無理してない?」「うん!平気!私は……お母さんともお父さんとも離れたくないから」「夢子……ありがとう」母親は泣きながら夢子を抱きしめた。ーーーそして二人は部屋に戻り眠りについた。「……うぅ、……」夢子は夢を見ていた。それは幼い頃の夢だった。夢子が風邪をひいた時の夢だった。母親が夢子の看病をしている。「大丈夫?夢子」「うん!大丈夫だよ!」母親は優しく微笑む。隣りにいた父親も「夢子!大丈夫か?」と心配して声をかける。「大丈夫!お父さん」「お、おう……」父親は少し恥ずかしそうに夢子を見ていた。「早くよくなれよ」「うん!」夢子は笑顔で言う。「お母さん!お父さん!」夢子が目を覚ますとそこは自分の部屋だった。どうやら夢だったようだ。(懐かしいな……あの頃に戻りたい)夢子はそう思いながらも、今はもう戻れないことを分かっていた。「あの頃の幸せな時間に戻りたいよ……」夢子はそう呟いて再び眠りについた。ーーー