第2章 柱合会議と、霞の少年
お館様が退室され、柱たちも次々と場を辞していく。
ようやく一息ついた私は、自室へ戻ろうと歩き出した。
(……?)
ふと、背中に奇妙な違和感を覚えた。
気配、というにはあまりに希薄で、けれど確かにそこに「何か」がいる。
振り返ると、そこには一人の少年が立っていた。
「あ、気づくんだね」
「わっ、えっ……!?」
霞柱、時透無一郎。
いつの間に。全く音がしなかった。
よく見ると、私の隊服はやはり彼のものとよく似ている。
「今のは、気配を極限まで消して近づいたんだよ。
普通の人間なら最後まで気づかないはずなんだけど」
「えっと……ごめんなさい。うまく言えないけれど、背中に何か違和感があって。……正直、刀もまだですし、戦えるかどうかも分からないんです。説明できなくてすみません」
私が困り顔で答えると、彼は無表情な瞳をこちらに向けた。
「……もしかして、君は記憶がないの?」
「それも、よく分からなくて。今、この瞬間さえ夢なんじゃないかって思っている自分もいて……」
無一郎は何も言わず、じっと私を見つめている。
「なるべく早く役に立てるように、自分に何ができるか探してみるね。……声をかけてくれて嬉しかったよ、無一郎くん!」
「!」
名前を呼んだ瞬間、彼の眉がぴくりと動いた。
「……名前、僕は教えてないけど。お館様から何か聞いたの?」
「えっと……お館様からは皆さんが『柱』であることしか聞いていないよ。……今は混乱させてしまうかもしれないから、今度の稽古の時にお話ししてもいいかな?」
「…………うん、わかった」
彼はそれ以上追及することなく、背を向けてふらりと去っていった。 その後ろ姿を見送りながら、私は小さく息を吐く。
(やっぱり、無一郎くんはまだ子供なんだ……。でも、近くで見ると分かる。あの体つき、並大抵の努力じゃない)
彼の凄絶なまでの鍛錬を思い、改めて身が引き締まる思いだった。私は今度こそ、自室への道を歩き始めた。
*