第33章 炎柱との出会い
宴が終わり、杏寿郎さんが「少し道場で体を動かしてくる!」と席を外した時のこと。
片付けを手伝おうとした私に、千寿郎くんがそっと近づいてきました。
「さん……あの、少しだけいいですか?」
少し顔を赤らめ、指先をもじもじとさせている千寿郎くん。
その姿は、かつての自信なさげな少年ではなく、一人の男の子としての決意を秘めているように見えた。
「兄上が、さんのことを心から愛しているのは分かっています。
……でも、僕も、さんといると、心がとても温かくなるんです。兄上のような強い炎ではないけれど、僕なりの『灯火』を、さんに届けたい」
千寿郎くんは、私の瞳を真っ直ぐに見つめました。
「……今度、兄上には内緒で、僕と二人でお出かけしてくれませんか? 里の奥にある、綺麗な花が咲く秘密の場所があるんです。……兄上抜きで、僕だけのさんでいてほしいんです」
「千寿郎くん……」
兄への敬愛を抱きつつも、一歩踏み出した彼の勇気。
その純粋な眼差しに、私は思わず胸がキュンと鳴るのを感じた。
「ええ、喜んで。二人だけの秘密ね」
私が微笑んで彼の頭を撫でると、千寿郎くんはパッと顔を輝かせ、私の指先にそっと、兄の熱い口づけとは違う、羽が触れるような優しい口づけを落とした。
「ありがとうございます……! 大好きです、さん」
その光景を、道場へ行ったはずの杏寿郎さんが物陰から
「よもやよもやだ……! 千寿郎、お前も男になったな……だが俺の愛も負けんぞ!」
と、涙ぐみながら見守っていたことを、私たちはまだ知らなかった。
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