第33章 炎柱との出会い
陽光が穏やかに降り注ぐ、ある春の昼下がり。
私は里の通りで、一人の少年と出会った。
「あ、さん!」
声をかけてくれたのは、煉獄杏寿郎さんの弟、千寿郎くん。
かつてはどこか影のあった彼の表情も、今では兄譲りの快活さと、彼自身の穏やかな優しさが混ざり合い、とても幸せそうな光景を周囲に振りまいている。
私たちは近くのベンチに座り、近況を報告し合うことにした。
「兄上は最近、屋敷でもずっとさんの話ばかりしているんです。あんなに楽しそうな兄上を見られるなんて、僕は本当に幸せで……」
千寿郎くんは少し照れくさそうに笑い、それからふと思い出したように私の瞳を覗き込みました。
「あの、さん。……さんと兄上の、本当の『最初の出会い』は、どんなものだったんですか? 兄上は『情熱的だった!』としか言ってくれなくて……」
「ふふ、杏寿郎さんらしいわね」 私は懐かしさに目を細め、ゆっくりと語りだしました。
「あれは、まだ私がこの世界に来て間もない頃……。迷い込んだ深い森で、私は鬼に追い詰められていたの。震えて、声も出なくて、もうダメだと思ったその時、森の木々が真っ赤に燃え上がるような錯覚に陥ったわ」
千寿郎くんは息を呑んで聞き入っています。
「現れたのは、太陽そのもののような人だったの。杏寿郎さんは、鬼を一瞬で斬り捨てると、恐怖で動けなくなっていた私の前に膝をついて、私の目を見てこう言ったの。 『もう大丈夫だ! 俺が来たからには、君の髪一本、指一本すら傷つけさせない! 胸を張って生きろ!』……って」
その時の彼の、一切の曇りもない笑顔。
そして、汚れを知らない真っ直ぐな瞳。
「絶望の淵にいた私にとって、彼の言葉は文字通り『命の灯火』だった。
あの時、杏寿郎さんが私の手を取ってくれなかったら、今の私はいないのよ」
そう思うと、私ってみんなに助けられているんだよねと改めて感謝の気持ちが溢れた。
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