第32章 村田の保護(?)計画 ― 逆効果の隠れ家
村田さんが義勇さんや実弥さんに引きずられていく阿鼻叫喚の光景を眺めながら、私の脳裏には、まだこの場所が「戦場」だった頃の、静かで温かい記憶が鮮明に蘇ってきた。
それは、私が自分の力の無さに絶望し、一人で稽古場の隅に座り込んでいた時のこと。
柱たちの圧倒的な強さを目の当たりにし、自分は足手まといではないか、ここにいていい人間ではないのではないかと、自信を失い、膝を抱えて涙を堪えていた私。
そこに、一人の隊士がふらりと現れました。
「……なんだ、も居残りか? 熱心だなぁ」
村田さんだった。
彼は泥だらけの顔で笑いながら、私の隣にどさっと腰を下ろした。
「俺なんてさ、昨日も風柱にボコボコにされてさ。才能の差ってやつを見せつけられて、正直、心の中じゃ何度も『辞めてぇなぁ』って思ってるよ」
村田さんは空を見上げ、少し寂しそうに、でも優しく続けました。
「でもさ、俺たちが『普通』だからこそ、できることもあるだろ? 柱の人たちが切り拓いた道を、後ろから支えて、繋いでいく。……俺は、君がそこにいてくれるだけで、なんだかホッとするんだ。君の弱さは、誰かの救いになってるんだぜ」
そう言って、彼は私の頭を「よしよし」と、まるでお兄ちゃんのように不器用に撫でてくれた。
あの時、彼のその「普通の優しさ」に、私はどれほど救われたことか。
柱たちの強すぎる光に目が眩みそうだった私にとって、村田さんは暗闇を照らす街灯のような、穏やかな安心そのものだった。
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