第31章 久しぶりの再会
柱たちの熾烈な「愛の包囲網」から逃れるように、私は少し離れた静かな里の茶屋へと足を運んでいた。
そこには、かつての戦友であり、数少ない「常識的な友人」である村田さんの姿があった。
「おっ、じゃないか! 元気にしてたか?」
村田さんの屈託のない笑顔に、私は張り詰めていた心の糸がふっと緩むのを感じた。
私たちは茶屋の隅で、懐かしい鬼殺隊時代の話を咲かせた。
「あの頃は必死だったよな。俺なんて、いつ死ぬかと思って毎日震えてたよ。でも、君がいつも明るく励ましてくれたから、なんとか生き残れたんだ」
「そんなことないですよ、村田さんだって立派に戦ってたじゃないですか」
戦い抜いた者同士にしか分からない空気感。
平和になった世界で、こうして笑い合える幸せを噛み締めていると、村田さんの表情がふと、真剣なものに変わる。
「……。ちょっと、あっちの林の方まで歩かないか? 人目が多すぎて、落ち着かないんだ」
人気の途絶えた木漏れ日の下、村田さんは足を止めた。
「俺さ……ずっと言えなかったことがあるんだ。君が柱の皆や炭治郎に囲まれてるのを見て、俺みたいな『普通』の隊士が割り込む余地なんてないって、自分に言い聞かせてた」
村田さんが一歩近づく。
「でも、やっぱり諦めきれないんだ。俺は、君のことが好きだ。……派手なことはできないし、強くもないけど、君を誰よりも穏やかに愛する自信だけはある」
「え……っ、村田、さん……?」
驚きで固まる私を、村田さんは壊れ物を扱うように優しく、けれどしっかりと抱きしめた。
柱たちの強引な抱擁とは違う、少し震えている、等身大の男の子の温もり。
「……一度だけでいい。君の『普通』の枠に、俺を入れさせてくれ」
顔を上げると、至近距離に村田さんの顔があった。
重なったのは、羽の触れ合うような、ひどく優しくて不器用なキス。
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