第4章 水柱のスパルタ稽古
無一郎くんはパッと羽織から手を離すと、
今度は私の顔をじっと覗き込んできた。その瞳がいつもより少しだけ鋭い。
「……それに、君、さっきから顔が赤い。冨岡さんと何かあったの?」
「な、なにもないよ!? ただ、その、鮭大根が美味しかったって話とか……!」
「鮭大根? ……ふうん」
彼はあからさまに納得がいかないというように、小さく鼻を鳴らした。
そして、私の袖口をぐいっと引っ張る。
「……もういいよ。そんなブカブカで動きにくそうな羽織、早く脱いで。僕の部屋に来て。もっと君に合うのを貸してあげるから」
「え、ええっ!? でもこれ、義勇さんに返さないと……」
「返してくればいいじゃない。今すぐ。僕がついて行ってあげるから」
有無を言わせない力強さで腕を引かれ、私はたじたじになる。
(無一郎くん、なんだか昨日よりずっと距離が近い気がする……。それに、もしかして怒ってる?)
「……ねえ、聞いてる? 行くよ、」
名前を呼ばれ、ドキリとする。
無機質なようでいて、どこか独占欲のようなものを滲ませる少年の瞳に、私は抗うことができず、そのまま彼に引かれるまま歩き出すしかなかった。
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