• テキストサイズ

大事なモノ~みんなの幸せを祈って~【鬼滅の刃】

第4章 水柱のスパルタ稽古



視線を落として、私は短い悲鳴を上げた。

激しい稽古の末、支給されたばかりの隊服の脇から胸元にかけてが、大きく裂けてしまっていたのだ。
大きめのサイズが災いしたのか、動くたびに中が危うく見え隠れしている。

「ひゃっ……!? やだ、いつの間に!」
「……っ、すまない。俺の指導が激しすぎたせいだ」

義勇は顔を背けながら、慌てて自分の羽織を脱ぎ、私の方へと差し出してきた。

「これで隠せ。早く」
「あ、ありがとうございます……!」

焦って羽織を受け取ろうとした、その時だった。
床に残っていた汗か、それとも足の疲労が限界だったのか。
私の足が、つるりと滑った。

「わっ……!」
「危ない!」

義勇が咄嗟に私の腕を掴み、引き寄せようとする。
けれど、あまりの勢いに、彼も体勢を崩してしまった。



――ドサッ。


静かな廊下に、二人が倒れ込む鈍い音が響く。
痛みに目を瞑っていた私が、おそるおそる瞼を開けると、すぐ目の前に、驚愕に染まった義勇の顔があった。



そして、唇に触れる、柔らかくも熱い感触。



「……っ!?」



重なった拍子に、私たちの唇は、逃げ場のない距離でぴたりと密着していた。

心臓が口から飛び出しそうなほどの衝撃。

義勇の瞳が至近距離で揺れている。



数秒……いや、永遠にも感じられる静止の後、彼は弾かれたように身を引いた。

「す……、すまない! 決して、そのようなつもりでは……!」

義勇は顔を真っ赤にし、口元を片手で覆いながら、信じられないほど狼狽している。

あのクールな水柱が、今にも消えてしまいそうなほど小さくなっているのだ。

「い、いえ……不可抗力ですから! 私も、足元がフラついてしまって……」

私もまた、顔が爆発しそうなほど熱い。

破れた服のことも忘れ、ただ、今しがた触れた熱の感覚だけが頭の中を支配していた。

「……今日は、もう休め。怪我がないか、後で隠を寄越す」

義勇はそれだけを早口で告げると、羽織を私に押し付けたまま、逃げるように廊下の奥へと消えていった。

残された私は、彼から借りた半々羽織の匂いに包まれながら、しばらくその場から動くことができなかった。



(……これ、明日からどんな顔して稽古に行けばいいの……!?)


*
/ 138ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp