第55章 伊黒との静かな夜 ― 呪縛を解く星空
伊黒さんの腕の中で、私は張り詰めていた心の糸がふっと緩むのを感じた。
彼は私を支えるように立たせると、周囲を警戒するような鋭い視線を一度走らせ、静かに告げた。
「今夜は、他の騒がしい奴らには指一本触れさせない。……俺の屋敷へ来い。お前には休息が必要だ」
伊黒さんは宣言通り、追ってきた実弥さんや宇髄さんの気配を「蛇の執念」で見事に撒き、私を自身の屋敷の縁側へと導いた。
見上げた夜空には、零れんばかりの星。
伊黒さんは隣で鏑丸を撫でながら、ぽつりぽつりと、今まで誰にも語らなかった自身の忌まわしい過去……一族の呪縛と、蛇鬼に怯えた幼少期の話を語ってくれた。
「俺の血は汚れている。……だからこそ、清らかなお前に惹かれたのかもしれん。だが、汚れた俺でも、お前を守る盾になれるなら、この命を使い切りたいと思っているんだ」
彼の告白は、重く、切実で。
私は言葉もなく彼の手に自分の手を重ねた。
彼が私を求めているのは単なる独占欲ではなく、光を求める切なる願いなのだと知り、私たちの絆は、これまでとは違う、魂の深いところで結びついたような気がしたのだ。
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