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大事なモノ~みんなの幸せを祈って~【鬼滅の刃】

第44章 焦燥の霧 ― 霞柱のなりふり構わぬ甘え


炭治郎の抱える「命の恩人」というあまりにも重く尊い絆を知り、無一郎の中にあった余裕は完全に消え去っていった。


その日の夜、無一郎くんは私の部屋に音もなく現れました。いつもなら淡々としている彼の瞳は、今にも雨が降り出しそうなほど潤み、不安げに揺れています。

「……」

「無一郎くん? どうしたの、そんな顔して……」

私が声をかける間もなく、彼は私の膝に崩れ落ちるように頭を預けてきました。いわゆる「膝枕」の体勢ですが、その体は小刻みに震えています。

「……聞いたよ。炭治郎との過去。君が、炭治郎の家族を救ったんだってね。……そんなの、反則じゃないか。僕が知らない君を、炭治郎はずっと前から知っていて、家族まで味方につけてるなんて……」

無一郎くんはの腰に腕を回し、顔を私の腹部に押し付けるようにして、ぎゅっと力を込めました。

「僕には、君しかいないのに。記憶を失くして、真っ白だった僕の世界に色を付けてくれたのは君だけなんだ。炭治郎には守るべき家族がいるけど、僕には、君がいないと何も残らない……」


「ねえ、お願いだから……炭治郎のところに行かないで。炭治郎の家族になんてならないで。……僕だけの、僕だけの『家族』になってよ」

無一郎くんの声が震え、私の着物に温かい雫が染み込んでいく。

あの「天才」と呼ばれ、最年少で柱に登り詰めた彼が、今、私の膝の上で一人の孤独な少年に戻り、必死に私を繋ぎ止めようと泣いている。

「無一郎くん、泣かないで。私はどこにも行かないわ……」

私が彼の柔らかな髪を撫でると、彼は顔を上げ、涙に濡れた瞳で私を見上げた。

その表情は、庇護欲をそそる幼さと、獲物を決して逃さない男の執着が混ざり合った、抗いがたい魅力を放ってた。



「本当?……じゃあ、今夜は、炭治郎のことも、義勇さんのことも、他の誰のことも考えないって約束して。……僕のことだけを見て。僕だけで、君の頭の中をいっぱいにしてよ」

彼は私の手を自分の頬に寄せ、縋るように何度も口づけを落としました。

「……君を炭治郎に渡すくらいなら、僕は……何だってする。君を閉じ込めて、僕以外の人に会わせないようにすることだって、本気で考えてるんだから」



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