第8章 新月の夜
朝練を始めて数十分。翔陽のスパイクが飛んできて、久しぶりに少し怖かった。咄嗟に腕を隠すと、破裂音を立てた腕にぶつかったボールは、遠くに飛んでいった。翔陽、スパイクの威力上がってる。
「揺ー!ごめん!怪我してない!?」
「ん、大丈夫!翔陽、威力上がってる!すごい!」
ボールが飛んでくるなんてよくあること。背中向けてなくてよかった…。
元気な翔陽が顔の前で手を合わせて眉を下げている。だが、私の言葉ですぐに笑顔になった。翔陽はすごいな…好きなことに一生懸命で。それを言うなら、飛雄もか。いや、ここにいるみんな、一生懸命に、楽しんでバレーをやっている。
「おい、日向ボゲェ!!アウトだぞ!」
トスを上げている飛雄が叫んでいる。コート外にいる私のとこに真っ直ぐ飛んできたもんね。狙ってるみたいに真っ直ぐ…苦笑いが零れる。
縁下さんやコーチの声で朝練は終わり、飛雄が真っ直ぐ私のところに走ってくる。優しく手を掴んで少し上げた。ジャージの袖を捲られ、ボールが当たったところを見る。
「ちょっと赤くなってる。痛くねぇ?…痛ぇよな、湿布貼る」
「見た目程、痛くないから…っ、ちょっと……」
そのまま手を引っ張られて、ボールが当たったところに口付けられた。田中さんに睨まれてるから…やめて欲しい。
その後は湿布を貼ってもらい、急いで更衣室に向かった。