第6章 惑わす影
ご飯を食べて飛雄の部屋でバレーボールの雑誌を見ていると、またスマホが鳴る。
「出ろよ。月島だろ?」
「わかってたんだ…出たくないって言ったら?」
「なんか用があんのかもだろ…俺のことはいいから」
飛雄の近くに寄って、電話に出る。蛍が怖かった。飛雄が関わると蛍の雰囲気が変わる。
「ねぇ、影山のとこいるんでしょ。帰ってきて」
声が低くて、すごく機嫌が悪いのがわかった。でも、このままだと何も変わらないのはわかっている。この、よくわからない関係のまま、現実から逃げ続けることは出来ない。
「帰らない。飛雄と一緒にいたいから、帰らない」
蛍の声がもっと低くなった。それでも、「他に用がないなら切る」とはっきり言葉にする。ちゃんと話さなきゃいけないのはわかってる。だから――時間を作って直接話す。
電話を切って、飛雄の胸に寄りかかった。抱き締めるように回された手に、髪を優しく撫でられる。いい。これでいい。あの夏に出会った初恋に落ちてしまえばいい。
惑わすように落ちた影が、「好きだ」と口付けを落とした。