第5章 月影に背を向けて
夏休みに入り、部活漬けの日々を送っていた。あれから蛍とは身体を重ねておらず、飛雄くんの家にも行っていない。私の答えが出るまで、二人から離れていたい。
飛雄くんがくれたタオルと同じ物をやっと見付けた私は、体育館の扉を開けて真ん丸の黒髪を探した。ボールに触っているのを見付けて、すぐに駆け寄っていく。
「飛雄くん、おはよ!タオルね、やっと見付けたの!同じやつ!あの時は本当にありがとう!」
「別にいいつったのに…サンキュな」
新品のタオルを飛雄くんに渡し、鞄から同じ物を取り出す。
「これは、私が使っていい?」
「ん?あぁ、いいぞ。お揃いだな」
お揃い…飛雄くんとお揃いの物…宝物にしよう。すぐに私はそう決めた。ニコッと優しく笑った飛雄くんに心臓が音を立てて跳ねた。こういう時思ってしまう…この人の隣にいたいと。
でも…このままでは月の引力に抗えない。引っ張られた水面は戻ってくることなく、どこまでも引き摺られていく。いつになったら私は海岸まで戻れるのだろうか。
水面を跳ねた魚は引力に逆らうように、私を海岸へと引き戻してくれないだろうか…息が出来なくて苦しい。
頭を撫でた飛雄くんに驚いて固まってしまう。一瞬、唇が触れたからだ。こんなとこで…飛雄くんは目を泳がせて、少しだけ頬を淡く染めた。
「わり、可愛すぎて我慢出来なかった」