第2章 始まりの糸
中学生になったある日、私は蛍と忠のバレーの試合を見に行った。中学生にしては大きすぎる蛍。離れていても、すぐにその月のような髪を見つけられる。
だけど――私はその日、初めての衝動に胸が太鼓のように響いて、息も忘れ、言葉を紡ぐことすら出来なかった。
蛍たちとは別のコートに、私の目は囚われてしまった。青と白のユニフォーム、北川第一だ。その中でたった一人だけ私の目を引く人物。誰かは知らない。目を引くような華やかさがあるわけでもない。それなのに私は、その人から目が離せなかった。
黒髪でボールのように丸く、目は幼さ故か、少し大きく、それでも鋭くつり上がっていた。
「この気持ちって……?」
私はその日、初恋の儚さを知った。きっと、見掛けることはあっても、これから先、言葉を視線を、交わすことはないだろう。私の存在をあの人に刻みつけることなんて出来ないだろう。
火照った頬を無視するように、蛍たちに目線を戻した。何故か、目が合った蛍に睨まれているような気がした。
試合が終わっても、私の頭から…心から、あの人が消えることはなかった。目を閉じれば、瞼の裏にあの人の姿が鮮明に浮かぶ。
でも、目を開ければいつも、月のように静かで、琥珀のように穏やかな温かさに、私の全ては覆われていく。
ある夏の日の太陽が照りつく熱い昼の木陰、初恋は月に溶けていった。