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TRUE〜絡み合う糸〜【ハイキュー!!】

第2章 始まりの糸


小学生になると私と蛍の仲に、忠――山口忠が加わった。そして、忠と出会う前に…父と兄は私の目の前から姿を消した。まるで――指の隙間から零れ落ちる砂のように、一瞬で…。

「いかないでっ!」と泣き叫ぶ私の声を拾えなかった兄は、「会いに来るから…」と寂しげに微笑んでいた。拾うのでなく、跳ね除けられたような感覚がしていた。

どうして父と母が別れたのかは知らなかった。どうして父と兄が出ていくのか知らなかった。幼かった私はただ、両親に大好きな兄を取られたような気がして、少しの恨みを募らせた。

「揺、早く」

朝、迎えに来た蛍が起きたばかりの私を急かす。起きたのも、蛍が起こしてくれたからだ。母の声では起きれず、静かな蛍の声で毎日私は目覚める。この時――唇に触れていた柔らかい温かさは、知らないフリをしていた。

蛍がいるのにも関わらず、パジャマを脱いで着替える私はまだ幼かった。頬を淡く染めて目を背ける蛍にも気付いていなかった。

ランドセルに教科書やノート、筆箱等を詰め込んでリビングへとドタバタと駆ける。その後を蛍はいつも、涼しい顔で追いかけてきていた。

「なんでいつも僕が起こさないといけないの。自分で起きて」

母が準備してくれたご飯を慌てて食べて、蛍にごめんと謝る。

「蛍じゃないと起きれないの!」

蛍は少し笑っていた。それ以上は咎めることなく、歯を磨いている私の髪を整えてくれる。優しく触れる指先の擽ったさがなんなのか、この時は知らない。

騒がしい朝はランドセルを背負って家を出るまで。玄関の扉を閉めれば、蛍の少し冷たい手に優しく包み込まれ、知らず知らずのうちに、穏やかになっていく。
そんな毎日だった。
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