第5章 月影に背を向けて
蛍に目元を覆われているとだんだんと眠気が訪れ、夢の中へ沈んでいく。あぁ、このまま目覚めなければいいのに。
蛍と飛雄くんと手を繋いで、後ろを兄と明光くんが優しい笑みを浮かべてついてくる――そんな夢を見ていた。
結局、私は夢の中でも、どちらかを選べないのか…それでも、夢の中の私たちは幸せそうだった。もし、どちらも選ばず、曖昧な関係を続けられたら、そうなれるのだろうか。
考えてはいけないことを頭の中から振り払って、現実と向き合った。カーテンの隙間から覗く月は――満ちている。まるで、影など寄せ付けないと言うように__。
このまま烏の群れの中で、ぬるま湯に浸かっていたい。そんなこと……
「許されるわけもないのに…」
ベッドサイドに目を向ければ、眼鏡を掛けたまま蛍が腕をついて、座ったまま眠っている。起こさないように眼鏡を外して、ナイトテーブルに置いた。
ゆっくり起き上がって部屋を出ていく。シャワーを浴びて、キッチンにある夕飯を温めた。とうに日付けは変わってしまっている。
夕飯を食べて部屋に戻ると、眠りが浅かったのか、扉を開けた音で微睡む蛍。「起こしてごめんね」と声をかけ、ベッドに横にならせた。