第2章 始まりの糸
蛍――月島蛍とは、いつから一緒にいたのかもわからずに、ただ当たり前のように隣にいた。年長さんとは思えない落ち着きを持つ蛍は、いつも温かい空気を私に与えてくれる。
「揺ー!そろそろ帰るよ!」
「お兄ちゃん!わかった!」
ランドセルを背負った私の兄――菅原孝支が蛍と保育園の遊具で遊んでいた私を迎えに来る。これもいつもの光景。蛍は私の兄が"スガ"だとは気付いていなかった。
蛍にまたねと告げ、兄の元へ駆け寄る。蛍はこの後、お兄さんの明光くんが迎えに来る。
これが私たち、幼馴染の毎日だった。
兄に手を掴まれ保育園を後にする。私は兄が大好きだった。いつも優しくて怒ることは滅多にない。蛍とは違う優しさを持っていた。
「うわっ!揺の手、真っ黒じゃん!何してたの?」
私の手の汚さに気付いた兄は機嫌が悪くなることもなく、優しく手を握ったままだった。遊具で遊ぶ前に土で遊んでいたから、乾いた土がぽろぽろと落ちていく。昨日まで雨が降っていた。
「つち!えへへ、まっくろ〜!お兄ちゃんの手も、まっくろ〜!」
あの頃はまだ、何も知らないまま笑っていた。