第4章 還る月
無理やり腕を引かれて家の中に入っていく。「おかえり〜」と母や義父の声が聞こえて返そうとしたら、蛍に遮られた。
「父さん義母さん、ちょっと揺と話あるから、部屋に来ないで」
両親の姿を見ないまま階段を登っていく。グイッと引かれて部屋に入れば、噛み付くように唇を奪われた。いつも静かな月が赤く染まった夜だった。そういえば今日は、ストロベリームーンだったな__。
永遠の愛――なんかじゃない。蛍から逃れる好機なのではないか。そう思っても、抵抗する手も、否定する口も、持ち合わせていなかった。
ベッドに押し倒しされて、カーテンの隙間から淡い薄紅になった月が顔を出す。静かに影を失くしていくその光を、私は睨むように見つめていた。
色を失くしていく空の月とは逆に、目の前の月は赤く熱を増していく。口数は少なく静かなのに、その内に秘めた炎を琥珀のような瞳に宿していた。
「はぁ、はぁ……影山のキスなんて忘れてよ…僕だけでいいでしょ?……早く忘れて」
やっと離れたと思った唇は再び重なった。私から何もかも奪い去るように熱い舌が追い詰める。影が――月の光に抗えず、形を失くしていく。