第3章 影に落ちる
目を細めた影山くんの手の平に口付ける。ビクッと手を引こうとしたが、影山くんは好きにさせてくれた。
「今は何もしねぇ。けど、あいつがいる家には帰したくねぇ…」
何も答えられずに影山くんを見つめたまま固まっていると、「飯食わねぇ?」と問いかけてきた。首を振ろうとしたが、その前にお腹が返事をする。影山くんは笑って、優しく頭を撫でた。
パーカーを両手でぎゅっと掴んで乱れた制服を隠す。パーカーおっきい……それにしても、なんで影山くんは私を好きになってくれたんだろう。落ち着いてきた頭で冷静に考えてみた。でもよくわからなかった。
「今作るから、一緒に来い」
影山くんは頭を撫でたまま「悪かった」と呟き、シャツのボタンを閉じていく。
「もう何もしねぇから怖がんな。あ、あー、っと…泊まってけよ。時間も遅ぇし、どうせ明日は部活だけだ」
影山くんの家に泊まる?そんなことして大丈夫だろうか…脳裏に月が浮かんだ。だけど、その月は影に覆われていく。あぁ、私…この人の傍にいたいんだ。月に囚われた初恋が解き放たれていく感覚がした。
母に仁花ちゃんのところに泊まると伝えて、仁花ちゃんには話を合わせてもらうよう、メッセージを送っておいた。
「あ、その…お家の人は?挨拶しないと…」
「いねぇ…どうせ今日は帰って来ねぇし気にすんな」
影山くんはニカッと笑った。苦しくなる程に胸が高鳴って、触れたくて…無意識にその頬へと手を伸ばしていた。影山くんも私の頬に触れて、気付けば唇が重なっていた。
「あ、わり…何もしねぇつったのに……行くぞ」
頬に触れていた手を握られ、そのまま部屋を出ていった。