第2章 始まりの糸
初めて言葉を発したもう1人の人物へと目を向ける。その瞬間、私は蛍の腕から離れ、跳ねた心臓を押さえた。太鼓のような、花火のような、その高鳴りは、私は抑える術を知らない。
あの人だ。あの夏の日、一瞬にして私の心を奪った人。全身が心臓となったように脈打ち、この人だと叫んでいる。身体を巡る血液が温度を上げる。蛍に塗り替えられたはずなのに、私の心はどうしようもなく、その人を求めていた。
もう戻ることの出来ないあの夏。純粋だったあの頃。私はもう月の色に染まっている。影のように真っ黒なあの人は、もう求められない。それでもいい、言葉を視線を…交わすことが出来るのならば…。
「お前、身長は」
「ツッキーは188cmあるんだぜ。もうすぐ190だ」
なんで忠がそんな自慢気に答えてるの…蛍もそう思っていたようだ。
それよりも…あの人の名前は…どんな人なの?知りたい。あの人のこと、もっと知りたい。
蛍はチラッと私を見てからあの人に声をかけたようだが、見られていたことには気付かなかった。
「あんたは北川第一の影山だろ?そんなエリート、なんで烏野にいんのさ」
かげやま…影山?蛍は知っていたようだ。私はあまりバレーに詳しくなかったし、調べることも許されなかっただろう。未だに早鐘を打つ心臓が、何故か心地良かった。