第2章 始まりの糸
桜が咲き始めた4月上旬、寒さと桜が咲くほどの温かさが共存した季節に、私たちは新しい制服へと袖を通す。少し大きめの制服。少し前まで着ていた制服は、少し小さかった。
ヘッドフォンを首に下げてポケットに手を突っ込みながら歩く蛍についていった。あの頃繋がれていた手はもう、どこにもない。高校1年生となった私たちが、親に見られる場所でそんなことは出来ないのだ。
親だけではない、私たちは兄妹となったのだから、人前でそんなことは出来ない。恋愛感情なのかもわからずに、モヤモヤする日々を送っていた。
「ツッキー!!揺ちゃん!」
忠に呼ばれ2人で振り向く。ある分岐点で私たちは合流して烏野高校へと向かうのだ。
忠は私のことを森川さんと呼んでいた。だけどもう私は森川ではない。名前を呼ばれることは嬉しいが、菅原でも森川でもなく、月島なのが、どうしようもなく恨めしかった。
もう一度、菅原に戻りたい…そんな叶うわけもない密かな願いを抱えたまま、新たな門出へと歩を進めた。