第2章 始まりの糸
その後も残りの中学3年生の時間は、ほとんど蛍のものになった。部活で帰りが遅い蛍は、帰りに私の家に寄る。本当は母が蛍の家にいるので、真っ直ぐそっちに行ってもよかったのだが、蛍は「待ってて」と言った。
週に2〜3回、誰もいない私の部屋で、蛍は私を求める。恋人でもないのだから、こんなのは間違っているとわかっていたが、一度その一線を超えてしまえば、抵抗なんてなくなっていた。どうせ、後戻りは出来ないから。
あの夏の日、試合会場で見たあの人は、蛍に忘れさせられてしまった。あの人のことを考える度に蛍はそれに気付いているかのように、塗り替えてしまう。私は既に、蛍の色に染まっていた。
「揺、今日はキスだけでいいよ」
今日はしない日らしい。する日は曜日が決まっているわけじゃない。全て、蛍の気分次第なのだ。それでも、しない日は触れるだけのキスをする。どうして私なのかわからなかった。蛍はモテるのに…。
優しく頬を撫で、重なる唇。私のよくわからない蛍への感情は、夏の夜に溶けていった。