第1章 この呪いをかけたのは、彼の実の妹だった。
医者や魔法使いといっても、この世の全てのケガや病気を治せるわけじゃない。
それでも、見捨てるわけにはいかない。
医者とキャロルは協力して、その人間の命を繋ぎ止めた。
仮眠を交代でとって、死なないように、ずっと傍に居た。
治療している時に、この人間が女だと分かったらしいよ。
キャロルの家族に、女はキャロル以外には居ないのに。
キャロルの両親は、キャロルが小さい頃にわかれていたそうだよ。キャロルは父のもとで、二つ上の兄と一緒に過ごしていた。
治療から一週間程経った頃、その人間は目を開けた。
キャロルは心底安心したそうだよ。
そりゃそうだ。
自分の家に知らない人間がいて、しかも両手両足を切断されていたのだから。
何故そうなっていたのか、何があったのか、知らなきゃいけない。
医者が、まず名前を尋ねた。
しかし、目覚めたはずの人間は何も答えない。
そればかりか、天井をずっと見つめていて、質問している医者を見ようともしなかった。
人と会話できないくらい、精神がやられてしまったらしい。