第1章 この呪いをかけたのは、彼の実の妹だった。
キャロルが旅から戻って、家の中に入ると、階段付近で何かが動いていた。
それは、ぼさぼさの長い毛が生えており、鼻が曲がりそうな程の異臭を放っていた。
汚れた布が、関節の無い、枝のように細い短い前足と後ろ足に、乱雑に巻かれていた。
そして、それは床でもぞもぞと動いている。
……君は、これが何かわかるかい?
魔物?
魔法で動かした人形?
どれも違う。
人間だったんだ。
信じられない?
キャロルも、最初はそう思っただろう。
でも、それは人間だった。
関節の無い短い前足と後ろ足は、切り落とされていた結果、そう見えただけだ。
キャロルはその人間に、魔法をかけた。
治療魔法さ。治療魔法といっても、切り落とされた腕や足が元通りになるわけではない。
それでも、しないよりはマシだろう?
キャロルはその人間を抱えて、医者の所に駆け込んだ。
その人間からは蛆が沸いていた。
蛆がキャロルの服の中に入って、とても不快だったけれど、そんな事をいちいち気にしている余裕なんてものはない。
異臭を放つ変な生物を持ってこられて、医者も最初は断りたかっただろう。
でも、それは人間だ。
生きた人間。