第6章 ほどける心
高専の門へと向かう道は、夕暮れ色に沈みつつあった。
門のすぐそばには、澪が立っていた。
制服のスカートの裾を指先でつまみ、どこか落ち着かない様子で周囲を見回している。
「……遅かったね。」
彼女は甚爾の姿を見つけると、小さく笑みを浮かべる。
甚「ちょっと話してただけだ。」
甚爾は簡潔に答え、彼女の方へ歩み寄る。
距離が縮まると彼の影が彼女の足元をすっぽり覆った。
甚「行くか。」
自然な調子で隣に立ち、歩き出す。
2人の間には短い沈黙が流れ、やがて澪が小さな声で口を開く。
甚「……何の話をしてたの?」
甚「俺の気持ちの話。」
そう答える声は低く淡々としていたが、どこか余韻を残す響きがあった。
澪は足を止めそうになるが、彼の横顔を見て何も言わずに歩みを続けた。
───────
門から少し離れた路地の角を曲がると、そこにひときわ背の高い影が立っていた。
夕陽を背に片手をポケットに突っ込み、片方の口角だけを上げて笑っている――
悟だ。
悟「おー、やっと来たか。」
その声には軽さと皮肉が同居している。
甚「何してんだ、お前。」
甚爾が低く問いかける。
悟「ちょっと散歩してただけだよ。それより……仲良く歩いてたじゃねぇか。」
悟は2人を見比べ、意味ありげに笑う。
悟「良い雰囲気だったな。」
澪は小さく息を呑み、視線を落とす。
甚爾の眉がわずかに動くが返す言葉はない。
悟はさらに1歩近づき、澪の正面に立った。
悟「……で?今日はどこまで行ったんだ?」
その挑発的な言い方に、澪は顔を上げられず甚爾は無言で睨みつける。
しかし悟は怯むどころか、ますます笑みを深めた。
悟「まぁ良いや。俺も混ぜてもらうぜ。」
その提案が本気なのか、ただ空気をかき乱したいだけなのか
――わからないまま、3人は並んで歩き出す。
夕陽に照らされた長い影が石畳に3本、重なり合いながら伸びていった。