• テキストサイズ

俺の名は

第5章 心に宿る、君の声


その無言の圧力さえも、甚爾にとっては格好の餌だった。

甚「特に、お前の声だ。あれは笑える。必死に抑えようとして、結局乱れて…。」

彼はわざとゆっくりと指先を耳元に当て、思い出すように目を細める。

甚「“やめろ”とか“もう”って、泣きそうな声で何度も言ってたな。」

澪の頬に血が上る。

否定しようとしても、喉がうまく動かない。

悟の横顔には確かに苛立ちが浮かんでいるが、それ以上に奥底に燃える何かが見えた。

甚「お前の女、なかなか良い声出すじゃねぇか。」

甚爾は今度は澪をまっすぐ見据え、唇を吊り上げた。

甚「腰も、正直でよ…こっちが動くたびに、勝手に合わせてきやがる。」

悟「……黙れ。」

悟の声は低く、だが確実に温度を失っていく。

甚「黙らせたいなら、どうする?」

挑発するように1歩近づき、悟の間合いに踏み込む。

悟の腕がわずかに動いた瞬間、甚爾はあざけるように笑い、すっと引いた。

甚「まぁ良い。俺はもう十分楽しんだ。」

その言葉と共に、ドアの前まで歩みを進める。

だが手をかけたところで立ち止まり、半ば振り返った。

悟と澪の両方を一瞥し、目尻を吊り上げる。

甚「お前も、こいつも――淫乱だ。」

低く、はっきりと吐き出されたその言葉は耳の奥に焼きつく。

澪の心臓が激しく跳ね、悟の呼吸が一瞬止まる。

そして甚は鼻で笑い、ドアを押し開けた。

足音が廊下に響き、やがて遠ざかっていく。

残された部屋には怒気を押し殺す悟と、膝の奥がわずかに震える澪だけ。

沈黙は、何よりも重かった。
/ 67ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp