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俺の名は

第5章 心に宿る、君の声


甚「悟に触られると、あんなに腰、動くんだな。」

わざとらしく低く笑い、肩越しに覗き込む。

甚「俺のときより…よっぽど楽しそうだった。」

「ちが…っ。」

反論しようとした瞬間、顎の下に長い指が滑り込み強引に上を向かされる。

甚「違う? じゃあ何だ? 演技か?」

目の奥まで射抜くような視線。

澪は唇を噛み、言葉を飲み込んだ。

甚爾は満足げに鼻で笑い、さらに耳元へ顔を近づける。

甚「まぁ…淫乱なのは悪いことじゃねぇ。お前のそういうとこ、アイツも喜んでたぜ。」

吐息混じりの声が鼓膜を震わせる。

「…やめてって、言ってるでしょ。」

消え入りそうな声で抗うが、甚爾は引かない。

むしろ囁きをさらに湿らせ、ねっとりと続ける。

甚「無理だな。あんな顔、忘れられねぇ。」

その手はゆっくりと背中に回され、腰骨のあたりをなぞる。

甚「ほら、もう…耳まで赤い。」

くすくすと笑いながら、再び一言だけ落とした。

甚「淫乱。」

その響きは嘲りと甘さが混じった毒のように、澪の中に残り続けた。




背後から、低く押し殺した声が落ちた。

悟「――やめろ、甚爾。」

その瞬間、空気が一変する。

背筋を冷たい指先でなぞられたような感覚が澪の全身を走り、思わず肩が震えた。

ゆっくりと振り向けば、廊下の入り口に悟が立っていた。

長身の影が逆光に浮かび、その瞳は暗く深く沈んでいる。

だが、その視線を受けても甚爾は微動だにしない。

むしろ口元を歪め、にやりと笑った。

悟の眉がわずかに動く。

そのわずかな反応を逃さず甚爾は片手をポケットに突っ込んだまま、気怠そうに首を傾ける。

甚「全部、聞いてた。昨夜のこと…お前がどんな声を出して、この女がどんな顔をしてたかもな。」

澪の喉がきゅっと締まり、息が詰まる。

昨夜の断片が脳裏に浮かび熱と羞恥と、混ざり合う何かが胸の奥で渦を巻く。

甚「わざわざ聞く気はなかったさ。」

甚爾は肩をすくめ、しかし口元の笑みは消えない。

甚「けどな…あんだけ甘ったるい声を出されたら、嫌でも耳に入ってくる。」

悟の視線が鋭く細められる。
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