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俺の名は

第4章 本物の熱


悟は、ドアノブを乱暴に捻った。

内側から鍵は掛かっていなかった。

開け放たれた瞬間、部屋の空気がぴたりと止まる。

悟「……おい。」

低く喉を震わせるような声が、狭い部屋に響く。

ベッドの端に座っていた澪は肩をびくりと揺らし、顔を上げた。

その瞳はうるんで赤く、涙の筋が頬を伝っている。

悟は1歩、2歩と中へ踏み込み背後でドアを閉めた。

足音は重く、確かに追い詰める気配を持っていた。

悟「……あいつと、最後までやったんだろ。」

吐き捨てるような言葉に、澪は首を横に振る。

「違う、そんなこと……!」

悟「じゃあ、なんで泣いてんだ。」

「……悟が、そんな風に言うから……。」

悟は苛立ちを隠そうともせずベッドの前まで進み出ると、上から彼女を見下ろした。

その視線は冷たくもあり、獲物を狙う獣のようでもあった。

悟「泣けば許されると思ってるのか?」

澪の肩が小さく震えた。

「……ちが……う……。」

悟は腕を伸ばし、彼女の手首を掴む。

その力は、逃げる隙を与えないほど強かった。

悟「じゃあ、ちゃんと説明しろよ。俺のこの目を見て。」

引き寄せられた澪は顔をそむけようとするが、顎を掴まれて無理やり正面を向かされる。

悟「……嘘ついてみろ。すぐわかる。」

悟の声は低く、耳の奥に残るほど近かった。

「ほんとに……何もない……。」

震える声でそう告げる澪に、悟は鼻で笑う。

悟「信じられねぇな。」

次の瞬間、悟は彼女を押し倒した。

ベッドのマットレスがきしみ、背中が沈み込む。

「やめて……。」

押し返そうとする腕は、すぐに悟の片手に押さえつけられた。

悟「力で勝てると思うか?」

そう囁きながら、もう片方の手は彼女の腰に回される。

指先が布越しに、くっきりと体のラインをなぞる。

悟「……俺が聞きたいのは1つだけだ。あいつとしたのか、してないのか。」

「……してない……。」

涙混じりの声で訴える澪を、悟はじっと見つめる。

悟「嘘だったら……許さねぇぞ。」

彼の体からは熱が伝わってくる。
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