第4章 本物の熱
悟の声で話すその姿は、外から見れば紛れもなく五条悟だ。
だがその口調は、どう聞いても甚爾そのものだった。
甚「ここでバラバラに動いてもろくなことにならねぇ。だったら一緒にいた方が良い。……な?」
甚爾は、まるで当然のように提案した。
甚「ホテル探してんだろ? どうせなら3人で住める部屋借りりゃいいじゃん」
澪は目を瞬かせる。
「3人で……?」
甚「そうだ。俺たちが元に戻るまでの間、オマエにもいてもらう。こいつが本当に悟かどうか、そばで見極められるだろ。」
澪は悟と甚爾を交互に見た。
悟は内心で
悟(余計なことを……。)
と舌打ちしたくなったが、確かに彼女の協力は無視できない。
逃げられるよりは、そばに置いて監視してもらった方が良い
――そう自分に言い聞かせる。
「……分かった。でも、変なことしたら許さないから。」
その返答は半分本気、半分探りのように響いた。
こうして、3人で一時的に過ごすための“隠れ家探し”が始まった。
だが悟は、この先の生活がただの同居で終わらないだろうという予感を拭いきれずにいた――。
数日が過ぎ3人の奇妙な同居生活にも、形だけの“日常”が芽生え始めていた。
互いに干渉しすぎない距離感――
しかしそれは、常に緊張の糸を張り詰めたままの均衡でもあった。
その日、悟は
悟「買い出し行ってくる。」
と軽く言い残して部屋を出ていった。
ドアが閉まる音が響き、足音が遠ざかる。
残されたのは、甚爾と澪だけ。
部屋の空気が、わずかに重くなる。
ソファに腰掛けて雑誌をめくっていた澪は、その視線が自分に注がれていることをすぐに察した。
ページをめくる手を止めず、視線だけを上げる。
そこには悟の顔をした甚爾が、ゆっくりとした笑みを浮かべて立っていた。
「……何?」
澪の声は平静を装っていたが、内心では予感のようなものが芽を出していた。