第2章 偽りの肌
甚「……否定、できねぇんだな。」
低く落ちた声に、澪は反射的に唇を噛んだ。
その一瞬の迷いを、甚爾は逃さなかった。
甚「……ほら、来い。」
ぐい、と手首を掴まれた瞬間、体が引き寄せられる。
次の瞬間には、扉の内側へと足を踏み入れていた。
背後でドアが静かに閉まる音が、やけに大きく響く。
部屋の中は夜の静けさに包まれていたが、空気は妙に熱を帯びていた。
甚爾は澪を振り返ると、その顎に指をかけ視線を無理やり自分に向けさせる。
甚「外じゃできねぇこと、してやるよ。」
囁くというより、命令に近い低音。
澪は息を詰め肩を強張らせた。
しかしその反応すら、甚爾の目には格好の餌にしか映らない。
甚「さっきから目、泳いでんぞ。」
わざとゆっくりと、頬をなぞる指先。
そのまま首筋を滑り降り、鎖骨のくぼみで止まった。
甚爾「……こういうとこ、敏感なんじゃねぇのか。」
軽く指先で押すだけで、澪の背筋が小さく震える。
その反応に、甚爾は口の端を吊り上げた。
甚「おい、ちゃんと見ろ。」
顎を上げさせられ、逃げ場のない視線が絡み合う。
彼の瞳は鋭く、しかし奥底に炎のような熱を宿していた。
甚「嫌なら声出せ。……止まらねぇけどな。」
挑発的な笑みと共に、その唇が首筋に近づく。
熱い吐息が肌を撫でた瞬間、澪は思わず肩を竦めた。
甚「……やっぱ、素直だな。」
噛みつくように唇を押し付け皮膚を甘く、しかし容赦なく吸い上げる。
微かな痛みと熱が混ざった感覚が、澪の胸をざわつかせた。
甚「逃げられると思うなよ。」
腰を強く引き寄せられ、体が密着する。
彼の手は背中を這い、指先が意図的に敏感な部分を探り当てる。
甚「お前、さっきから震えてんの、気づいてねぇと思ったか?」
耳元に低く落ちる声。
わざと鼓膜を震わせるように響き、その言葉1つ1つが皮膚を内側から熱くする。