第2章 偽りの肌
夜の帳が高専の敷地を包み込み、窓の外には虫の音が静かに響いていた。
甚爾は悟の部屋に腰を下ろし、背もたれに深く沈み込みながら昼間の一幕を頭の中で何度も再生していた。
壁際に追い詰めた女の表情――
あの驚きと、わずかな怯え、そして拒絶しきれない迷い。
そこへ硝子が割って入った時の、寸前で断ち切られた甘い間。
甚「……惜しかったな。」
独り言のように呟き、唇の端を上げる。
焦る必要はない。
むしろあれで良かった。
中途半端に終わったからこそ、相手は続きを考えずには居られない。
その時――
コン、コン。
軽くノックする音が扉越しに響く。
甚爾は片眉を上げ、面倒そうに腰を上げた。
甚「……誰だよ、こんな時間に。」
ドアを開けると、そこには澪が立っていた。
廊下の照明に照らされた顔は、どこか落ち着かず視線を彷徨わせている。
甚「……どうした?」
甚爾は悟の軽い調子で問いかける。