第6章 香水
急に鈴が出て行って、手持ち無沙汰になった伏黒は不安を抱えていた。
もしかしてこの香りが気に食わなかったのではないかと。
勘がいいのが嫌になる。だって体を近づけてすぐ鈴の態度はおかしくなった。
五条のことは褒めていたから、香水自体が嫌いとかじゃないと思う。
もしかしてこの香りが苦手だった?そりゃ五条のハイブランドの香水には勝てないだろうけど。
伏黒はタオルを濡らして首元の香水を拭い取った。せっかく買ったのに出番はなさそうだ。
(晩メシ、どうするかな…)
本当なら鈴と食べる予定だったのに。連絡してみようか、今どこで何をしているんだろう。
そう思っているとコンコンと玄関ドアをノックする音。期待して開けると、ドアの前に立っているのは虎杖で脱力する。
「伏黒、キャベツとにんじん買い過ぎた!もらって!」
「ああ、悪いな」
「あのさ、さっき電話で伏黒が窓の人にナンパされてたの釘崎に言っちゃったけど、まずかったかな?」
「なんだよ、ナンパって?」
「だって、アドレス書いた紙もらってただろ?めちゃ気ありそうだったじゃん」
「あれは五条先生に渡してくれって頼まれたんだ」
「そーなの!?いや、釘崎と一緒に蓮見もいるみたいでさ。聞かれちゃったかも」
バツが悪そうな虎杖の顔。すべての謎が解けた気がした。