第6章 香水
「野薔薇ちゃぁん!!!」
用事思い出した、と不自然に伏黒の部屋を飛び出した鈴は野薔薇の部屋に直行した。
彼氏の浮気疑惑をまくしたて、号泣する鈴に白けた視線を向ける野薔薇とたまたま居合わせた真希。
「伏黒が浮気ねぇ…」
まず考えられない。彼は鈴にべた惚れだから。
「絶対浮気だ…!美人で賢くて料理が上手で反転術式使えてレア術式持ってるみたいな女の香りだったもん」
「誰だよ、それ?」
そんな人間存在したら見てみたい。非現実的な浮気相手。鈴は疑問に感じるどころか、絶望に打ちひしがれていた。
「浮気っていうか、本気なのかな……。だってそんな人に私、敵いっこないもん…」
「いや、だからさ…」
思い込みは激しく、もはや誰の聞く耳ももたない。
「虎杖に聞いてみたらいいんじゃない?今日は二人で任務だったでしょ?」
言うや早く、とっとと事態を収拾したい野薔薇は虎杖に連絡した。
「おっつー、虎杖。ねぇ、今日の任務、伏黒と二人きりだったんでしょ?やましいことしてたんじゃないでしょうね?キャバクラとか」
「何だよ、いきなり。キャバクラは昼間からやってねぇだろ。未成年だし。
それに二人きりじゃなかったぞ。窓の人が案内してくれてさ。あー、そういえば伏黒、任務の後その人にナンパされてたわ。めっちゃ美人でさ」
「は?ふざけんじゃねぇぞ!余計話がややこしくなるじゃねぇか!!」
ブチっと野薔薇は途中でハンズフリーモードの電話を切る。
「真希さぁん!!」
浮気を確信した鈴は真希の胸に顔を埋めて子どもみたいに泣き始めた。
「浮気ぐらいでそんなに泣くなら別れろや」
「それは嫌!!」