第7章 第6話 ― ライブの日 ―
先週の休日、玖仁くんと行ったカフェは落ち着いた心地よい空間だった。
その思い出がまだ胸に残る中、今日は蓮のライブの日だった。
ライブハウスは観客の熱気で溢れていた。
彼は汗を流しながら、必死にギターを弾いていた。
その姿は、あの日と同じようにまっすぐで、まぶしかった。
終演後、楽屋へ向かうと、
彼はタオルで首元を拭きながらこちらを見た。
「この間、カフェで男と一緒におったやろ……あれ、誰?」
急に言われて、思わず瞬きをする。
「近くの美容室の美容師さんだよ〜。この間担当してもらったの!」
そう言うと、彼は少し視線を逸らして、低い声で聞いてきた。
「……ほんまに、それだけ?」
その声音が、どこか棘を含んでいる気がして、
胸の奥がざわついた。
「なにそれ。なんでそんなこと聞くの?関係ないじゃん」
語気が強くなったのは、自分でも分かった。
「関係ないって……やましいことないなら、普通に答えられるやろ」
その言葉に、カッとなってしまった。
「やましいことなんてないよ。でも、そんなふうに言われたらイヤに決まってるでしょ!」
空気が一瞬で重くなった。
彼は何か言いかけて、結局言葉を飲み込んだ。
気まずい沈黙に耐えられなくて、私はそのまま楽屋を後にした。
帰宅してからも、彼の問いと声のトーンが頭から離れなかった。
どうしてあんな言い方をしたんだろう。
どうして、あんなに怒ってしまったんだろう。
その夜は、なかなか眠りにつけなかった。