• テキストサイズ

彼らの手と、私の心

第7章 第6話 ― ライブの日 ―


先週の休日、玖仁くんと行ったカフェは落ち着いた心地よい空間だった。
その思い出がまだ胸に残る中、今日は蓮のライブの日だった。

ライブハウスは観客の熱気で溢れていた。
彼は汗を流しながら、必死にギターを弾いていた。
その姿は、あの日と同じようにまっすぐで、まぶしかった。

終演後、楽屋へ向かうと、
彼はタオルで首元を拭きながらこちらを見た。

「この間、カフェで男と一緒におったやろ……あれ、誰?」

急に言われて、思わず瞬きをする。

「近くの美容室の美容師さんだよ〜。この間担当してもらったの!」

そう言うと、彼は少し視線を逸らして、低い声で聞いてきた。

「……ほんまに、それだけ?」

その声音が、どこか棘を含んでいる気がして、
胸の奥がざわついた。

「なにそれ。なんでそんなこと聞くの?関係ないじゃん」

語気が強くなったのは、自分でも分かった。

「関係ないって……やましいことないなら、普通に答えられるやろ」

その言葉に、カッとなってしまった。

「やましいことなんてないよ。でも、そんなふうに言われたらイヤに決まってるでしょ!」

空気が一瞬で重くなった。
彼は何か言いかけて、結局言葉を飲み込んだ。

気まずい沈黙に耐えられなくて、私はそのまま楽屋を後にした。

帰宅してからも、彼の問いと声のトーンが頭から離れなかった。
どうしてあんな言い方をしたんだろう。
どうして、あんなに怒ってしまったんだろう。

その夜は、なかなか眠りにつけなかった。
/ 9ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp