第18章 第17話 ― 隣に居られる安心 ―
蓮と約束していたライブ当日。
会場はいつもの熱気に包まれていて、ステージの上の彼は相変わらず真剣で、でも楽しそうで、何より眩しかった。
終演後、私はこれまでのように楽屋へと足を運ぶ。
「蓮!お疲れ様!」
そう笑顔で声をかけると、
「うん。ありがとう」
とだけ返事が返ってくる。
やっぱり、どこか距離がある気がした。
その瞬間、胸の奥に、嫌な確信が生まれた。
このままだと、いつか絶対に失う。
そしてその時、私はきっと後悔する。
だから、聞いた。
「最近、何か……素っ気なくない?」
彼は一瞬だけ視線を逸らしてから、静かに息を吐いた。
「……最近、避けてしまってた」
「変に意識して、言葉にしたら壊れそうで……ごめんな」
少しの沈黙のあと、彼は不器用なまま続ける。
「これからも……会いに来てくれる?」
その言葉を聞いた途端、胸の奥に溜まっていたものが、一気にほどけた。
安心がじんわりと広がって、気づいたら、涙が頬を伝っていた。
玖仁くんは、あたたかい優しさをくれる。
北翔さんは、静かに包み込むような感覚をくれる。
でも、昔からの友達で、軽口を叩けて、笑えて、腹が立ってもちゃんと戻れて。
そうやって一番素直に、喜怒哀楽を出せるのは、きっと彼だけだった。
ライブハウスを出て、夜風の中を並んで歩く。
しばらく無言のまま歩いていると、彼が迷うみたいに、少しだけ手を伸ばしてくる。
私はその手を取り、そっと握り返した。
指先に、熱が残っていた。
それはきっと──この先も隣にいる温度だ。