第5章 第4話 ― 帰り道 偶然の再会 ―
とある休日、少し出かけたくなって向かったショッピングモールは、大勢の人で賑わっていた。
一日中ショッピングをして気分転換をした私は、夕方頃に帰路につく。
「あれ? この間の……」
ふと声が聞こえた方に目をやると、この間髪を切ってもらった優しそうな美容師さんがこちらを見ていた。
「お出かけですか? ショッピング?」
「そうなんです。ちょうど帰って来たところで」
「荷物、重そうですね。よかったらお持ちしましょうか?」
彼が少し手を差し出した。その仕草が自然で、断る理由もなかった。
「ありがとうございます」
そう言って彼に荷物を半分預ける。
「この間はありがとうございました」
「いえいえ! お気に召していただけましたか?」
「はい! またお願いします」
「それならよかったです。またお越しくださいね」
そんな会話をしているうちに、我が家に着いた。
「手伝っていただいてありがとうございました」
「いえいえ。あの……もしご迷惑じゃなければ、LINE……交換してもいいですか?」
そう言って、彼は自分のスマホをズボンのポケットから取り出した。
「ぜひ!」
「ありがとうございます。よかったら今度、二人でどこかに出かけませんか?」
「いいですね。楽しみにしてますね」
「嬉しいです。僕も楽しみにしてます。行き先とかは、またゆっくり決めましょう。では、また……」
そう言って踵を返す彼の背中が見えなくなるまで見送って、
私は早くも次の約束のことばかり考えていた。