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彼らの手と、私の心

第2章 第1話 ― 蓮 ―


ライブハウスの照明は、相変わらず眩しかった。
赤と青のライトが交差して、汗の粒を淡く照らす。
ステージの上でギターを弾く姿が、ふと目に留まる。

その瞬間、時間が少し巻き戻った気がした。

あの人──蓮。
高校の文化祭で、誰よりも楽しそうに音を鳴らしていた。
同じ音楽室で笑い合っていた記憶が、
アンプの低音に混ざって、蘇ってくる。

演奏が終わり、拍手の波がゆっくりと引いていく。
出口に向かおうとしたとき、
後ろから、聞き慣れた声が届いた。

「……もしかして、?」

振り返ると、ステージの照明の残光の中に、彼が立っていた。
少し長くなった髪を手でかき上げて、笑う。

「久しぶりやな。まさか、ここで会うとは思わんかったわ」

その“わ”の響きに、懐かしさが胸を刺す。
彼の声は、昔より低くて、少しだけ優しかった。

「ライブ、見てくれてたん?」
「うん、偶然。友だちに誘われて」

「そっか。……なんか、うれしいな」

彼はそう言って、首にかけていたタオルで手を拭った。

「手、覚えてる? あの頃よりは、マシになってるやろ」

差し出された手は硬くて、
でも、不思議と落ち着く温度をしていた。
指先に触れた瞬間、ギターの弦を押さえた感覚が、よみがえる。

「また、聴きに来てや」
「……考えとく」

軽く笑い合ったあと、
彼の背中が、また照明の向こうに溶けていった。

残ったのは、手に残る温もりと、
胸の奥で、まだ鳴り続けている音だった。
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