第10章 第9話 ― ゆっくり近づく距離 ―
蓮と仲直りしてから、数日後。
私は、玖仁くんのいる美容室へと足を運んでいた。
「ご来店ありがとうございます。お久しぶりですね!」
いつもの穏やかな笑顔で、
空いている席へと案内してくれる。
カフェで一緒に過ごした日をきっかけに、
私たちは少しずつ仲良くなった。
今では、名前で呼び合って、
雑談も自然とできる関係になっていた。
「今日は、どうされますか?」
「少し短くして、整えてください」
そう伝えると、
彼は私の髪にそっと指を通し、
サクサクと丁寧に切り始めた。
「そういえば……
この前、ライブに行くって仰ってましたよね。
どうでした?」
「楽しかったです!
でも、その後ちょっと言い合いになっちゃって……。
今は、仲直りできたんですけどね」
「お知り合いが、いらっしゃるんですか?」
突然の質問に、
少し戸惑いながら答える。
「高校時代の同級生なんです。
ギター担当で、
ステージに立つ姿が、すごくカッコよくて……。
友達に誘われて観に行ったのがきっかけで、
そのあと、一人でも行くようになっちゃって」
気づけば、
テンション高めに、蓮のことを話していた。
「……そうなんですね。
それは、素敵です」
そう言いながらも、
どこか、ほんの少しだけ、
表情が曇った気がした。
けれど、すぐに、
やわらかい笑顔に戻る。
「でも……
僕も、もっとさんと仲良くなりたいです。
よかったら、
また、どこかへ二人で出かけましょうね」
その言葉に、
胸の奥が、ふわりと熱くなるのを感じた。
もっと、玖仁くんと仲良くなりたい──
自然と、そう思っていた。