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黒の王と白の剣 幻想水滸伝Ⅱ 夢

第20章 特別視点 戦場を見届けた者 本筋ルート(クラウス視点)


“剣”で生きた者たちの終わりを、“知”で生きる自分が焼き付ける――
それが、私にできる唯一の弔いだと思った。

***

勝った。
私たちは、勝ったのだ。

けれど、この手の中にあるのは、勝利ではなく虚しさだった。
数え切れない命を踏み越え、無数の夢と誇りを屠って、私たちはこの地に立っている。

それでも、人は戦うのだろう。
愚かだと知りながら、奪い、奪われ、また剣を取るのだろう。

――戦争に勝者などいない。
――ただ、生き残った者が、それを「勝利」と呼ぶだけだ。

「……父上。私は、あなたの望んだ未来にたどり着けたのでしょうか」

呟きは風に消える。
返ってくる声は、どこにもない。

だけど、それでいいのだと思った。
答えを求めることは、もうやめよう。

彼らは剣を持ち、己の信じたもののために死んだ。
ならば、私は知を持ち、己の信じた道を歩くまでだ。

この戦の果てに、何が待つのかは分からない。
だが、彼らの生き様は決して無駄ではなかった。
それだけは、胸を張って言える。

***

今日も風が吹いている。
戦場を渡っていったあの風が、今は穏やかに頬を撫でていく。

あの人のように、剣を振るうことはできなかった。
彼女のように、誰かのために命を懸けることもできなかった。

けれど――見届けることはできた。
彼らの生と死を、信念と誇りを、この目で見てきた。

だからこそ、私は生きていく。
彼らの記憶と共に、この戦いのすべてを胸に抱えて。

それが、戦場を見届けた者の責務だと信じているから。

そして、静かに祈る。
剣と共に散ったすべての者たちへ――

「安らかに」

その言葉だけが、戦いの果てに残った、たったひとつの真実だった。
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