第28章 追加if 二つの墓 数年後
言い切って、目を閉じる。
まぶたの裏で、白い髪と、黒い影と、灯りの色が、順番に流れていった。
「ありがとう、シード。助けてくれて。命を賭けて、私の世界を守ってくれて」
沈黙は、寒くない。
ここにも、もう一人の“私の場所”がある。
私は立ち上がり、空を見上げる。
雲の縁がほどけ、淡い青が広がり始めていた。
アルメリアが風に合わせて揺れ、影が丸く伸びたり縮んだりする。
「行ってきます。……見ていてくださいね」
丘を下りる足音は、静かで、強い。
振り返らない。振り返らなくても、二人が同じ風で頬を撫でていくのが分かったから。
――私の名は、今日も確かな音を立てて、生きている。
ルカ様も。シードも。
二つの花束が、同じ重さで胸にある。
その重さごと、私は前へ進む。