• テキストサイズ

黒の王と白の剣 幻想水滸伝Ⅱ 夢

第17章 最終章 黒の王と白の剣



身を屈め、彼女の耳元に口を寄せる。
誰にも届かない声で。

「アルネリア……俺は、お前を――」

言い切らない。
言い切ってしまえば、彼女の選んだ最期に、俺の色が混ざる。
それは違う。
この言葉は、俺だけの火として、胸の底で燃え尽きるまで無言でいればいい。

立ち上がれずにいる俺に、朝日が差す。
光は赤く、それから薄金に変わる。
世界は続く。
主も剣もいない世界が。

「……すまない」

遅すぎる、価値のない言葉。
それでも、今の俺を俺に繋ぎ止める最後の糸だった。

風が吹き、血の匂いを流していく。
砂に半ば埋もれた刃先が、一度だけ光を返した。

それが、白き剣の最後の瞬きだった。
/ 123ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp