• テキストサイズ

黒の王と白の剣 幻想水滸伝Ⅱ 夢

第13章 休戦の夜


「……はい」

背筋を伸ばし、敬礼して部屋を出る。
扉が閉まる音。ルカは小さく息を吐いた。

「……まったく。真面目すぎる」

口元に、ごく微かな笑みが触れた。



◆アルネリアの静かな独白

部屋へ戻ると、夕暮れが輪郭を柔らかくしていた。
橙の光がカーテンの隙間から床に落ち、埃が金の粒のように舞う。

机には、昨夜のグラスが二つ。
ただのガラス以上のものが残っている気がした。
縁に指を置く。少し冷たく、どこか温かい。

──あの夜は夢ではない。
ベッドに彼の気配を感じ、目を覚ました。
問おうとして声が出なかった。
抱き寄せられた瞬間、胸の奥が熱くなり、
怖くて、嬉しくて、息が詰まった。
そして眠った。

思い出すだけで心が跳ね、頬が熱を帯びる。
彼は国の頂に立つ人。自分はその剣。それ以上でも、それ以下でもない。
なのに――どうして。

胸に手を当てる。鼓動はまだ速い。
それは恐れではなく、温かいものだった。

「……私は、愚かですね……」

小さく笑い、椅子に座る。
窓の外で軍の旗が夕日に揺れる。
平穏はいつまで続くのか。休戦は永遠ではない。やがて剣を取る日が来る。
それでも――

「……今だけは……」

祈るように目を閉じ、呟く。
「今だけは、陛下の隣で、生きていたい」

淡い願いは静かな風に混じり、どこかへ運ばれていった。


/ 123ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp