第13章 休戦の夜
それしか言葉がなかった。
それ以上、何を言えばよいのかも分からなかった。
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「……だが、なぜ二日も城を空ける必要があった。
様子からすれば、一日でもよかったろう。」
『その……私はお酒にとても弱くて。
一人で飲み切れば翌日まで残ってしまうと思って……。
それに、こんな姿は……本当は、誰にも見せたくありませんでしたから。』
目を逸らし、頬を染め、指先でグラスの縁をなぞる。
普段の彼女からは考えられぬほど柔らかな仕草。
「……ふむ。」
『でも……陛下がほとんど飲んでくださったので、明日には動けそうです。』
「……良い。休め。」
短い言葉。
だがその声には、わずかな温が混じっていた。
『ですが……』
「くだらん休戦で今は戦もない。
一日くらい、お前がいなくてもどうとでもなる。」
一瞬、彼女は驚いたように瞬き――やがて穏やかに微笑んだ。
『……はい。ありがとうございます。』