第11章 幕間 剣を見つめる者たち
クルガン ― 戦士の誇りとして
壁際に立ち、クルガンは静かに腕を組んでいた。
夕陽を背に受けて、彼女は黙々と剣を振っている。
その太刀筋は、美しく、そして“生きて”いた。
最初に出会った頃は、ただ鋭く、ただ速かった。
今は違う。
その刃には意志があり、意味があり、そして未来がある。
「よく、ここまで来たな」
声に出すことはない。
だが心の底から湧き上がるその言葉は、父が子に向けるそれとよく似ていた。
同時に、それは“戦士”が“戦士”に向ける敬意でもあった。
彼女はもう、迷わない。
どんな戦場であっても、どんな命令であっても、己の刃で道を切り拓いていくだろう。
クルガンは目を細め、夜風を吸い込んだ。
――あとは、好きに斬ればいい。お前なら、それでいい。
***
三つの視線 ― 一つの剣
夜が更け、星が滲み始める。
それぞれの場所で、それぞれの思いを胸に、三人は同じ一点を見つめていた。
剣として。
仲間として。
そして、未来を担う者として。
アルネリア――その存在は、ただの“陛下の剣”ではなくなっていた。
彼らの心の中で、確かに何かを動かし、形を変え始めている。
彼女がこの先、どんな戦場へ赴くのか。
何を斬り、何を守り、どこへ向かうのか。
それは誰にも分からない。
ただ一つ、彼らは確信していた。
――この剣は、きっと世界を変える。
月の下、白き刃は静かに息づいていた。