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黒の王と白の剣 幻想水滸伝Ⅱ 夢

第28章 追加if 二つの墓 数年後


「シードは、貴方の見たかった世界を、私に託しました。
 “生きてください”って。……あの人は、そう言ったのです」

石へ視線を落とす。彫りの浅い影の中に、昔の笑顔が一瞬だけ浮かんだ気がした。
私は両手を重ね、静かに頭を垂れる。

「ルカ様。私は、貴方を愛していました。今も、ずっと。
 そしてあの人に、助けられて生きています。……どうか、お許しください。
 でも、もし許されないとしても、私は正直でいたい。
 私の中で、貴方も、あの人も、生きています」

風が通路を渡り、衣の裾を揺らす。
返事はない。けれど、静けさは優しかった。
私は立ち上がり、もう一つの花束を抱え直す。



城を出て、石段を下りる。
道を一本抜け、緩やかな丘へ。
そこには小さな墓標が並ぶ。戦の名も、役職も、階級も、今は関係がない。
同じ高さの石が、同じ風に撫でられている。

私は、その中のひとつの前で止まる。
名を刻んだ石は、磨かれ、よく手が入っていた。
ここには、いつも新しい水があり、周りの草は短く刈られている。
誰かが、私より先に手を合わせていくのだろう。

「……ただいま、シード」

花束を置く。影が落ちて、丸い花房がひとつ呼吸したみたいに揺れた。
私は小さく息を吸い、笑ってみせる。

「ねえ、聞こえますか。私、笑えるようになったんですよ」
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