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黒の王と白の剣 幻想水滸伝Ⅱ 夢

第25章 追加if 決戦 ― シードとクルガンの最期


喉の底で血の味のする笑いだ。
笑いは、人間が最期まで人間でいるための所作だと、今わかった。

リオウが一歩、沈む。
踵から爪先へ、重心を水面の上で滑らせるみたいに移す。
わずかな屈みから、トンファーの柄尻で俺の刃が起点を外される。
支点を失った剣は軽くなり、次の瞬間、側頭に水平打が走る――

「ッ!」

肩で受ける。腕が痺れる。退かない。退けば、後ろの誰かが死ぬ。

「はは、化けもんだな!」

クルガンが斜めに踏み込み、敵の膝を断つ。
血の花が泥に散った。
だがリオウは乱れない。
右のトンファーでクルガンの剣筋を絡め取り、左で俺の手首を打ち抜く。
痺れた指から、柄がわずかに滑る。

(まだだ)

前へ。
受ければ砕ける。避ければ遅れる。
ならば――踏み込む。

俺は胸を開く。痛みは、あとでいい。
いま優先すべきは一歩の位置、刃の角度、そしてクルガンの呼吸だ。

「クルガン!」

名を呼ぶ。返事は重い足音。
背中で分かる。“一緒に倒れる”ためじゃない。“一緒に立つ”ための足音だ。

敵のうねりが変わる。
六人の陣形がわずかに左右へ揺れ、リオウが俺へ角度を変えた。
来る。次が“決め”だ。

時間が伸びる。空気が潰れる。
視界の端で、丸い花房が揺れた気がした。
窓辺。細い光。
――「……“アルネリア”で、よかった、です」

胸の奥で、何かがやさしく弾ける。
俺は生きた。彼女と一緒に、生きてきた。
もう、それで充分だ。

「生きろよ」

声にならない声で、自分に、そして彼女に、もう一度だけ言う。

刃を振り抜く。
同時に、熱い杭が腹を貫いた。
リオウのトンファーの角が、鎧の隙を正確に穿っていた。
世界が白く瞬く。視界が、低い。

土が頬を冷やす。鉄の匂い。
遠くで、クルガンが斬り結ぶ音。

二度目の衝撃。胸が焼ける。
肺へ空気が入らず、世界にふるいがかかったみたいに音が遠ざかる。

俺は、倒れた。
仰向けの空は、雲の継ぎ目から薄く光る。
その光の縁で、誰かの靴音が止まった。クルガンだ。
彼も膝をつき、肩で大きく息をしている。胸から赤が零れていた。

「……相棒」

声が出た。自分でも驚くくらい、小さく、まっすぐに。

「クルガン……俺は楽しかったぜ……この国の事を想い……存分に戦った……」

クルガンは笑った。血で濡れた口元が、いつもの形に歪む。
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